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sinθ=2となるθの存在について


作成日時 2023/10/16 20:21
最終更新 2023/10/16 23:02


  • 序章
  • 級数による三角関数の定義
  • sinθ=2となるθの存在
  • 参考文献

  • 序章

    この記事は、大学数学を学んでいない高1が、sinθの値が2となるようなθを探し求める"物語"です。ですから、数学的な厳密性に欠ける部位が多くありますので、あくまでも興味関心の対象としてご覧下さい。

    まず初めに、高校数学における三角関数の定義について復習します。

    高校数学では、最初に 0°≦θ≦ 90 の範囲で直角三角形による三角関数の定義を与え、それを単位円による定義に拡張します。

    直角三角形による三角関数の定義は以下のようなものでした。

    直角三角形による三角関数の定義

    三角形の内角の和は180°であるため(ユークリッド幾何学の範囲)、直角三角形は1つの鋭角の大きさによってもう一方の鋭角の大きさも決定し、角度に対する三角比の値を与える関数を考えることができます。

    以下のように、右下を直角として、左下の角をθとした三角形を考えます。

    Trigonometry triangle

    上図に従って、以下のようにsinθ, cosθ, tanθをそれぞれ定義することができます。

    $$ sinθ = \frac{a}{h} $$ $$ cosθ = \frac{b}{h} $$ $$ tanθ = \frac{a}{b} $$

    単位円による三角関数の定義

    次に、三角関数を単位円周上に定義し、θのとりうる値(定義域)を拡張します。

    平面 \( R^2 \) 上で、原点を中心とした単位円を考えます。ここで、原点と円周上の任意の点Pを結ぶ線分tとx軸のなす角の大きさをθとするとき、その点Pの座標を(sinθ, cosθ)と定義します。

    また、tanθは線分tの傾き、すなわち \( tanθ = \frac{sinθ}{cosθ} \) となります。

    以上のように、単位円によって三角関数を定義し、三角関数のθの定義域を 0°≦θ≦90° から、実数全体に拡張することができました。

    しかし、θの定義域が実数全体でも、とりうる値は 0°≦sinθ≦1° の範囲です。そこで、以下に示すように定義域を複素数全体に更に拡張することを考えます。


    級数による三角関数の定義

    ここまで、高校数学の範囲では三角関数の定義を角度、辺の長さといった幾何学的な概念へ依存してきました。

    そこで、定義域を実数全体から複素数にまで拡張するために、無限級数を用いて以下のように三角関数を定義し直します。

    $$ sin(x) = x - \frac{x^3}{3!} + \frac{x^5}{5!} - \cdots $$ $$ cos(x) = 1 - \frac{x^2}{2!} + \frac{x^4}{4!} - \cdots $$

    この式は、三角関数をマクローリン展開して無限級数として表したものです。

    そもそもマクローリン展開とは、テイラー展開において a=0 としたもの、すなわち0の周りでのべき級数展開を考えたものです。ここで、その簡易的な定義を述べます。

    マクローリン展開

    無限回微分可能な多くの関数 f(x) について、以下の等式が成立します。

    $$ f(x) = \sum_{k=0}^\infty f^{(k)}(x) \frac{x^k}{k!} $$

    ここで、sin xのk階微分は、

    $$ (sin x)' → (cos x)' → (-sin x)' → (-cos x)' → \cdots $$

    という周期を繰り返すため、上記のような級数になることが分かります。

    以上のように、級数によって三角関数の定義域を複素数全体まで拡張することができました。

    早速ですが、この級数に \( x=i=\sqrt{-1} \) を代入して計算してみます。

    $$ sin(i) = i - \frac{i^3}{3!} + \frac{i^5}{5!} - \cdots = i( 1 + \frac{1}{3!} + \frac{1}{5!} + \cdots) $$

    別の形で表現できたのは良いですが、これでは具体的な値が全く分かりません。


    sinθ=2となるθの存在

    ここで、三角関数の世界とネイピア数e(自然対数の底)を繋げる不思議な公式「オイラーの公式」を利用します。オイラーの公式とは、以下のようなものでした。

    $$ e^{iz} = \cos z +i\sin z $$

    この公式は、e^xをマクローリン展開した結果から、以下のように導けます。

    $$ \begin{align} e^{ix} &= \textstyle\sum\limits^{\infty}_{n=0} \dfrac{i^n}{n!} x^n \\ &= \textstyle\sum\limits^{\infty}_{n=0} \dfrac{i^{2n}}{(2n)!}x^{2n} + \sum\limits_{n=0}^{\infty} \dfrac{i^{2n+1}}{(2n+1)!} x^{2n+1} \\ &= \textstyle\sum\limits_{n=0}^{\infty} \dfrac{(-1)^n}{(2n)!} x^{2n} + i \sum\limits_{n=0}^{\infty} \dfrac{(-1)^n}{(2n+1)!} x^{2n+1} \\ &= \cos x + i\sin x \end{align} $$

    これを変形して、以下のようにsinとcosを表すことができます。

    $$ \begin{align} \cos(z) &= \frac{e^{iz} + e^{-iz}}{2} \\ \sin(z) &= \frac{e^{iz} -e^{-iz}}{2i} \end{align} $$

    それでは、sin(z)=2となるzを求めてみます。

    $$ \frac{e^{iz} -e^{-iz}}{2i} = 2 $$ $$ (e^{iz})^2 − 4ie^{iz} − 1 = 0 $$

    これは \( e^{iz} \) を一つの変数とみなせば二次方程式となるため、解の公式を用いて、

    $$ e^{iz} = 2i ± \sqrt{3i} = (2±\sqrt{3})i $$

    両辺を極形式とみなして、

    $$ (2±\sqrt{3})i=(2±\sqrt{3})(cos \frac{\pi}{2} + i sin \frac{\pi}{2}) $$

    ゆえに、

    $$ z = (\frac{1}{2}+2n)\pi ± i log( 2 + \sqrt{3}) $$

    ただし、nは任意の非負整数(n = 1, 2, 3, …)で、iは虚数単位です。


    参考文献

    解析学入門 川畑茂徳 (福岡工業大学 電子工学科)

    マクローリン展開 | 高校数学の美しい物語

    sinxの値が2になる時 | 数学・統計教室の和から株式会社