謎のAI半導体メーカー”NVIDIA”に設計図共有サイト”GitHub”..IT用語の迷言まとめ
最終更新 2023/12/11 23:28
本記事では、メディアやSNS等において"誤ったニュアンスで使われているIT用語"、例えば「謎のAI半導体メーカー”NVIDIA”」や「設計図共有サイト”GitHub”」などを一覧にし、その背景やソースについて調査しました。
IT用語はその性質上、横文字や海外の直訳から成立するものが多いですが、それ故に多くの"迷言"が創造されています。日本は英語圏でないため、カタカナの専門用語が並べられると 「凄いもの」「最先端技術」といった偏見を抱きがちですが、そのようなバイアスに囚われて言葉巧みに騙されないよう気を付けましょう。
謎のAI半導体メーカー”NVIDIA”
この言葉の元ネタは、2017年の5月22日に公開された日経ビジネスオンラインの記事「詳報:トヨタが頼った謎のAI半導体メーカー」です。
詳報:トヨタが頼った謎のAI半導体メーカー:日経ビジネス電子版
実は、同記事のタイトルである"謎のAI半導体メーカー"とは、GPUで圧倒的なシェアを誇るNVIDIAのことだったのです。
GPUと言われると馴染みの薄い人も多いかもしれませんが、PCやゲーム機など幅広いデバイスでグラフィックの描写に利用されています。 また、最近ではGPGPUと呼ばれる技術も注目されており、特に生成AIの分野ではNVIDIAのGPUが大きな期待を背負っています。
今では時価総額が1兆ドル(約140兆円)を超えるほどの大企業を「謎のAI半導体メーカー」と呼称したことから、インターネット上では記事に関する疑問が相次ぎ、「NVIDIA = 謎のAI半導体メーカー」というネタが広まったのだと推測されます。
設計図共有サイト”GitHub”
Githubは、プログラミングにおいて、プロジェクト管理に用いられる最大手のリポジトリ管理サイトです。
一般的にはソースコードのバージョン管理などに利用されますが、Githubを日経新聞の記事が「設計図共有サイト」と表現したことにより、物議を醸しました。
具体的には、以下の記事が発端となっています(現在は修正されています)。
マイクロソフト、開発者向け共有サイト買収 8200億円 - 日本経済新聞
また、修正前の記事には、以下の内容が記述されています。
> 米マイクロソフト(MS)は4日、ソフト開発者が設計図を公開・共有できる > サイトを運営する米ギットハブを75億ドル(約8200億円)で買収すると発表した。
これは、IT用語である「リポジトリ」を初心者に配慮して嚙み砕いた表現だと思われますが、「プロジェクト管理サイト」や「プログラム公開サイト」ならまだしも、"設計図共有サイト"という解釈は新鮮ですね(笑)。
”JSON”という気味の悪い拡張子
この言葉は、2018年6月6日の「東洋経済オンライン」に6月6日に掲載された翻訳記事が発端です。
JSONは多次元配列をテキストとして保存するためのファイル形式であり、データの保存からプログラム設定の記録まで幅広く利用されています。
通常、JSONファイルをユーザーが直接開くことは少ないですが、一定数のプログラマーやシステム開発者は日常的に利用しており、それを「気味が悪い」と表現したため批判の対象となっています。
記事では、Googleに保存している自分のデータをダウンロードできる機能「Google Takeout」について説明し、非技術者のユーザーには利用しづらい形式のファイルが多いと批判していました。
具体的には「some files included the extension .JSON.My Google Maps location history was stored in a .JSON file, and it displayed an unintelligible list of GPS coordinates and time stamps.」です。
ところが、該当する文章は東洋経済オンラインの記事において 「グーグル・マップのロケーション履歴は、『.JSON』という聞いたこともない拡張子のファイルに収められていた」と訳されており、 付属している画像の見出しには「聞いたことのないファイルに収められている」「気味の悪い拡張子」と記載されていました。
ちなみに、このブログサイトはPHPとMySQLを用いて自作したものですが、内部では何度もJSONを利用しています。
世界的サーバー管理ソフト”Apache Log4j”
これは、以下の記事のタイトルに起因しています(既に修正済み)。
現在の記事タイトルは「ログ管理ソフトに欠陥、Amazonなど調査」ですが、元のタイトルは「世界的サーバー管理ソフトに欠陥、Amazonなど調査」でした。
ここで、タイトルにある"世界的サーバー管理ソフト"というのは、Apache Log4jを意味しています。記事が公開された2021年12月ごろ、このApache Log4jと呼ばれる有名なログ管理プログラムに、任意コード実行などの極めて危険性の高いセキュリティ上のバグが発見されました。
具体的にはJNDI Lookupと呼ばれる外部リクエスト機能の悪用(外部入力値の検証不備)により、任意のJavaコードを実行可能な脆弱性が存在します。
この脆弱性の報告に際して公開された記事ですが、記事の中身には「世界的に利用されているウェブサーバーのログ(接続記録)などを管理するソフトウエアに、セキュリティー上の欠陥が見つかったことが14日、分かった。」という的確な記載があるため、タイトルを決めた編集者と記事のライターが異なっているのではないかと推測されます。
Apache Log4jと混合されやすいのはWebサーバーアプリケーションである「Apache」で、こちらはWebサイトを公開するために世界中で利用されていますが、Log4jとは全く異なるプログラムです(もしかすると、"Apache Log4j"と"Apache"を混合してしまったのかもしれません)。
まとめ
本記事では、メディアやSNS等において"誤ったニュアンスで使われているIT用語"などをリストにし、その背景やソースについて調査しました。
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